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REPORT-レポート

2/27 読み聞かせ講座〈「読み聞かせ」 – 子どもと一緒に楽しむコツ -〉講師:馬場由美氏

昨年に引き続き、NPO法人 山梨子ども図書館より馬場由美さんをお迎えして読み聞かせ講座を開催しました。今年は、前回の概論から一歩踏み込んだ具体的な内容でした。読み聞かせや人形を使ったお話、ストーリーテリングなど、たくさんの実演を交えてご講義いただきました。その一部をご紹介します。

 

【子どもにとって「楽しい」ことって?】

図書館や学校で読み聞かせのボランティア活動をする時、子どもたちに「読み聞かせは楽しい」と思ってもらうために、まず「子どもにとって“楽しい”とは何かから考えていきたいと思います。学研教育総合研究所「小学生白書 」(2025年11月調査)によると、日常生活において、「楽しいと感じるとき」のランキングは、1位「テレビゲーム・携帯ゲーム」、2位「友だちとおしゃべり」、3位「外遊び」とあり、「読書」は11位でした。今の世の中、楽しみはたくさんある中で、「本の楽しみ」を子どもたちに味わってもらうには、厳しい現状であることを知る必要があります。

【読み聞かせの実践】

〈 導入〉

読み聞かせの始めに子どもの心をつかむため、まど・みちおの「くまさん」のような詩をいわば「短いお話」として紹介することもあります。詩は子どもにとって馴染みやすいものです。『めのまどあけろ』谷川俊太郎(福音館書店)も、朝にぴったりな詩の本です。いきなり始めるのではなく、時には「今日は寒いね」などと語りかけ、一回り子どもたちの様子を見て、感じ取ってから始めるだけでも、読み方も変わってくると思います。子どもたちに「楽しい時間が始まりそうだ」と感じてもらうためにも導入が必要なのだと思います。子どもと読み手との関係性がまだできていない最初の時は、人形を使って和んでもらう場合もあります。

〈本の見せ方〉

絵本を持つ時に気をつけなければならないことは、絵が見やすいように持つことです。私は、左開きの本は右手に持って絵にかぶさらないようにページを送っていますが、ご自身の持ちやすい手で持ってください。持つ場所は中心を持って、左右にぐらつかないように安定させてください。大きい本は、体に沿わせてあげると固定しやすいです。文字が見えにくい場合は、自身で何度も調整をして、自分にとって読みやすい距離を見つけてください。見えにくくなると絵本を子どもではなく自分に向けてしまう方が時々いらっしゃいますが。その場合、絵本の角度を変えず読み手自身が動いて調整してください。
事前の準備として、新しい本は「開き癖」をつけてください。見返しから1ページずつ交互に開いて、最後に真ん中を開きます。この順番で行うと背がきれいに開くようになります。きちんと開き癖をつけておくと、絵本が長持ちしスムーズに読むことができます。また、読むスピードや言いにくい箇所を確認するため、慣れている本でも声に出して下読みをすることが大切です。

〈本の読み方〉

絵本によって、リズムをつけて読んだり、大切な繰り返しの言葉は、書かれていなくても補って読んであげたりすることもあります。どうすればこの本を一番伝えられるか、ページを開くタイミングや言葉の抑揚など仲間の皆さんとも研究しながらやっていただきたいと思います。絵本を持つ高さも、相手の目線に合わせて調整する必要があります。人数が少ない場合、ひとり一人に本を見せに行くこともあります。『くだもの』平山和子(福音館書店)は、1対1でも、1対複数でも、描かれている果物を本物のように差し出してあげられる良い本だと思います。
また、余韻を楽しむ本として『よあけ』ユリ・シュルビッツ(福音館書店)があります。本当に静かな本です。だからこそ、ゆっくりじっくり読んで、絵を見せて欲しいです。じっくり見ることで、自然の偉大さを感じられます。このような本は、その時にはわからなくても、心の中に沁み込んで、後になって思い出すこともあります。読むスピードは、本や子どもの様子に合わせて調整してください。
避けて欲しいことは、ストーリー性のある本を読みながら子どもと視線を合わせることです。目の力は強いので、子どもを見てしまうと子どもは読み手が気になります。本の世界に集中させることが大切なので、聞き手を見ないようにしてください。人形を使う時も、子どもを直接見るのではなく、人形の後ろから目の奥を通して子どもを見ることで、人形が語りかけているように見えます。
下読みは、必ずして欲しいです。目を通すだけでなく、声に出してください。そうすることで、読むスピードを考えられたり、言いにくい文が確認できたりします。また、文章が見えにくい時にも、下読みをしておくことで対応ができるので、必ず下読みは行ってください。

〈 選書〉

本を選ぶことは非常に大切なことです。「かわいい」や「見た目の派手さ」ではありません。『ごろごろ にゃーん』長新太(福音館書店)が出版された時は、わけのわからない本だと言われたそうですが、子どもたちには大変人気でした。『きゅうりさんあぶないよ』スズキコージ(福音館書店)も同様です。スズキコージさんの絵も大人には理解できなくても、子どもたちには人気があります。
『かいじゅうたちのいるところ』モーリス・センダック(冨山房)も、親からのバッシングがあったそうです。私自身もこの絵本を何度も何度も読んで絵を見ているうちに、すごく頭の中にイメージが入ってきた場面がありました。たぶん子どもたちもそうなのだと思います。絵を読んでいると、書かれていない音や言葉が想像的に培われていくのだと思います。子どもが見ているのは、文字ではなく絵ですから。耳から聞いてはいるけれど、絵を見ながらその世界を感じているのです。
『いたずらきかんしゃ ちゅうちゅう』バージニア・リー・バートン(福音館書店)や、『もりのなか』マリー・ホール・エッツ(福音館書店)は、モノクロの絵本です。地味なのでなかなか大人が選ばない本でも、素晴らしい本なので挑戦して欲しいです。
対象年齢に関しては、『100万回生きたねこ』佐野洋子(講談社)のように年齢を問わず楽しめる本もあれば、『いない いない ばあ』松谷みよ子(童心社)のように、赤ちゃんでないと、なかなか楽しめない本もあるので、一冊一冊吟味して欲しいと思います。
読み聞かせの場所、人数、照明は選書の際の大切な検討要素です。例えば『おだんごパン』瀬田貞二(福音館書店)は、いいお話ですが絵が淡いので遠くだと見えにくいですが、少人数なら楽しめるので、人数や場所に合わせて選んで欲しいですね。本の大きさも同様です。また、本によっては照明に反射して絵が見えにくいことあります。会場の照明で絵本が光っていないか確認して、場所を移動したり必要なら代替の本を使ったりすることもあります。
事前にプログラムを考えておいても、当日の参加年齢的にどうも無理だという場合があります。そのような時は、無理せず本を取り換えてください。子どもたちのためにも、予定プログラム以外の本を数冊用意しておくと安心です。「私はこの本だったらいつでも読めます」という本を1冊持っておくことも大事だと思います。
『こすずめのぼうけん』エインワース(福音館書店)は、ストーリーテリングで語られることもあるお話です。これは石井桃子さんの美しい日本語で文章が書かれていますが、それだけでなく、絵もまた素晴らしい本です。堀内誠一さんが、登場する鳥たちの巣を見事に描き分け、生き物の暮らしぶりを学ぶことができる一冊です。

〈 子どもと楽しむ〉

子どもたちは見る力、読み取る力がものすごくあります。『てぶくろ』M・ラチョフ(福音館書店)では、てぶくろの家が増築されていくその変化を、子どもたちは本当によく見ています。ですから、あえて説明する必要はないと思います。
時には本の紹介や、ブックトークも有効です。ブックトークは、関連した本を幅広いジャンルで様々に紹介する方法です。本の紹介も、この後どうなるかと問いかける方法や、最初と最後を伝えて、真ん中の展開が面白いから読んでねという方法もあります。少し読んで、面白いところを少しだけ伝えると効果的です。テーマのあるブックトークは何冊も紹介するので時間がかかるのですが、本の紹介は1冊だけでもできます。
ストーリーテリングは、お話を覚えて語るものです。何度も何度も語り込んでいくと、味わい深いものになります。いきなり覚えて語るのは難しいと思うので、その場合は「なぞり読み」をおすすめします。朗読とは違って、読んでいる箇所がわかるように、指で文章をなぞりながら、短い文章を頭に入れながら、聞き手たちの顔を見てお話ができます。子どもたちの反応がダイレクトに伝わってくるので、ぜひ挑戦していただきたいです。
本を読む際に子どもたちを見ないでと話しましたが、目線を合わせながら読む本もあります。そのような本として子どもが参加できる本も紹介します。『ぺんぎんたいそう』斎藤慎(福音館書店)を親子に読むと、皆さん、まねをしてくれます。『やさいのおなか』『くだものなんだ』きうちかつ(福音館書店)もご存知の方が多いと思います。この『やさいのおなか』は、縁野菜のまわりの色が野菜の色になっています。『くだものなんだ』は更にまわりの絵がバージョンアップしています。よく見ると楽しい仕掛けがたくさんあるので、子どもたちにヒントを出してやり取りするととても楽しめます。『でじな』土屋富士夫(福音館書店)は「今日は特別にマジシャンのおじさんを連れてきました」と言って読んでいます。魔法の言葉を子どもたちと一緒に唱えて楽しむことができます。困った時にこういった本を一冊知っていると、箸休め的に、本の世界を楽しむことができます。

【書評や参考書】

書評や参考書はたくさんあります。お配りしたリストなどを読んでいただいて、ご自分の軸を作っていただきたいと思います。様々な書評がありますが、どの本にも掲載されている「基本書」と言われる本をまずはたくさん読んで「やっぱり自分としては、ここが軸だよね」と言える選書眼を持つとよいと思います。
東京都立図書館の『読み聞かせABC』(ダウンロード可)や、東京子ども図書館『よみきかせのきほん』は、お話の所要時間が記載されており選書に便利です。その他、対象年齢や、ジャンルなども載っています。
山梨県立図書館でも『読み聞かせ 実践のコツ&絵本の選び方』(ダウンロード可)を作っています。その他、Q&Aも掲載されているので、参考にしてください。
読み聞かせで使った本のリストを配布する際、表紙画像使用は注意が必要です。出版社によっても異なりますし、配布場所によって著作権法に抵触する場合があるので、ボランティアとはいえ、きちんと著作権法を守って活動していきたいですね。
読み手自身が「面白い」と感じた気持ちを素直にそのまま伝えていただきたいです。そして、子どもたちと一緒にその面白さを楽しんでもらいたいと思います。その経験は、成長した子どもから「あの時読んでもらって面白かった」などと声を掛けられるという素敵な出会いにつながることもあります。そのようなこと
が励みになり、また次へとつながっていくと思います。ぜひ、皆さんにもそのような素敵な出会いに巡りあって欲しいと思います。本日はありがとうございました。

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