REPORT-レポート

11/25 開館記念 対談「短歌つれづれ」俵万智氏×江宮隆之氏

秋の富士川町に歌人・俵万智さんをお迎えし、本町在住の歴史作家・江宮隆之さんとの対談を開催しました。

富士川町立図書館開館記念のイベントですが、秋の紫綬褒章受章という吉報が届き、受章後初めて多くの方の前でお話しされる特別な機会となりました。当日は県内外を含め約400名の方が参加されました。

お二人の出会いがデビュー作『サラダ記念日』の出版のきっかけとなったというエピソードから始まり、短歌を作ることについて思うこと、山梨の歌人俳人との思い出や、NHKの朝ドラ「舞いあがれ!」で登場人物が短歌を作ることが嬉しく、X(当時はTwitter)に投稿を重ねたエピソードなども話されました。また、生成AIが詠む短歌の話や、ご自身の歌集や新刊『アボカドの種』(角川文化振興財団)のこと、源氏物語や与謝野晶子のことなど多岐にわたりました。この対談の前には、お二人で富士川町内を巡りました。1933年10月に与謝野晶子と鉄幹が訪れ1泊した「萬屋醸造」では、来訪時に詠んだ晶子の歌「法隆寺など行く如し甲斐の御酒春鶯囀の醸さるる蔵」から酒の銘柄を「春鶯囀」と変えたことなどを江宮隆之さんが説明され、しばし思いをはせていたただき、母屋と庭を散策されました。町立図書館では、俵さんご自身から子どもたちに声をかけたり、おはなしコーナーでは、息子さんが小さい頃に図書館によく通ったお話や、学校に本の読み聞かせにも行ったことなど伺いました。

対談の中でも、図書館のお話や、ご自身の読書体験をとして、3歳の頃にお母様が読んでくれた『三びきのやぎのがらがらどん』(福音館書店)を覚えてしまったこと、それは「私がすごいのではなく、今も出版されているいい絵本を選び、子どもが覚えるくらい何回も読んだ母親がすごいのだ」と話されました。対談は約2時間、時折江宮さんが選んだ俵さんの短歌についても話題に上りました。『未来のサイズ』(角川文化振興財団)の歌「最後とは知らぬ最後が過ぎてゆくその連続と思う子育て」では、江宮さんは「子育てとあるけれども、何度も読むうちにこれは、今の一瞬一瞬の事でもあり、人との一期一会でもあるのではと思う」と投げかけ、俵さんは「そう読むこともできますね。子どもの成長の過程で、初めてのことは覚えているけど、最後って覚えていない。最後と分かっていればもっとこうしていればという気持ちになり、その最後が愛おしいって思える」と話されました。

俵さんは「多くの人に短歌を詠んでほしい」と話されます。「歌を詠むことに、道具はいらない、言葉はだれでも持っているもので誰でもできるもの。そして5・7・5・7・7とリズムのある型があることが作りやすいことでもあるということ」と会場の皆さんに短歌の魅力を伝えてらっしゃいました。そして「スーッと通り過ぎてしまう何気ない日常の一瞬一瞬を立ち止まって見ることができること、それは人生をゆっくり振り返り丁寧に生きることにつながる、それが短歌を詠むことだ」とメッセージをいただきました。

 

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